
マンションの外壁タイル工事は、見た目をきれいにするだけの仕事ではありません。ひとたびタイルが落下すれば、人身事故や通行止め、テナントクレームや賠償問題にまで発展しかねない大問題です。
管理組合やオーナー企業のほか、管理会社としては「どの会社に任せれば安全で、社内や理事会にも説明できるのか」という不安を常に抱えてはいないでしょうか?
問題解決の1つとして「マンションタイル修繕協会の会員企業を選ぶ」という選択肢があります。ただ「協会に加盟している企業を選んで本当にメリットがあるのか」「費用は高くならないのか」「会員企業だと何が違うのか」という疑問が出てくるものです。
そこで今回のお役立ちコラムでは、マンションタイル修繕協会についてくわしくお話しします。協会が持つ技術基準やチェック体制のほか、会員企業を選んだときの安全性・コスト・説明責任の違いなどがわかる内容です。
マンションの外壁タイルは、はがれて落ちると人の命にかかわる危険があります。美観だけ見れば問題なくきれいだとしても、中で浮きやヒビが進んでいてもおかしくないのです。その点を踏まえたうえで、なぜ「協会に加盟したほうがいいのか」についてお話しします。
高所から劣化した外壁タイルが落ちたとします。運悪く落下地点に人がいたら大事故です。けが人が出たら、建物の持ち主や管理者が責任を問われることも出てきます。
建築基準法では、一定の大きさ以上の建物に外壁をふくむ定期調査と報告が義務となっているのです。民法では「建物などの工作物に欠陥があり人に被害が出た場合、まずその建物を管理している占有者が、必要な注意をしていた場合には、その所有者が損害を賠償する仕組み」になっています。(民法717条)
外壁タイルの管理も、この「工作物責任」の考え方の対象となるのです。事故が起きたあとにあわてるのではなく、日ごろから専門的な調査と修繕を行っておくことが重要と言えます。
外壁タイル工事は、塗装より調査と設計の比重が大きい工事と言えます。どこまで打診調査をするか?浮きがどれくらいあるか?どの工法を使うか?と複数の問題を考えて決断しなければなりません。ネックになるのが必要な費用です。
「とにかく安く」という考えだけで施工企業を選ぶのは大きなリスクがあります。施工企業が手抜きをして、調査範囲を減らしたり、必要な補修を省いたりしてしまう恐れがあるのです。
外壁タイル工事が終了すれば「これで問題はない」と安心したくなりますが、話はそう簡単でもありません。施工不良があれば、数年後に再びタイルが浮くことも出てきます。最悪の場合、落下事故になって賠償責任も発生すれば結果的に高くつくのです。ただ、マンションタイル修繕協会に加盟している企業ならある程度安心できます。国の通達や業界の指針をふまえた調査・工法のルールを持ち、理由を説明できることが前提だからです。
参照:国土交通省「建築:定期報告制度における外壁のタイル等の調査について」

ここでは、マンション外壁タイルの修繕にくわしい会社が集まる業界団体として「マンションタイル修繕協会」についてお話しします。実際の名称や活動範囲は、地域や団体ごとに異なります。ただ、いずれもマンションを含む建物の外壁やタイルを安全に維持し、改修工事の水準の底上げを、共通した方向性として掲げている団体です。
タイルの落下事故がニュースになるたびに、国土交通省は外壁調査のルールを強化してきました。現状、手の届く範囲の打診にくわえ、10年ごとに外壁全体をしらべる考え方になっています。ドローンと赤外線カメラを使った調査も、テストハンマーによる打診と同じレベルの方法として認められているのです。
ただ、現場では、調査の質や報告書の書き方が会社ごとバラバラになっています。発注側が比較しにくいという課題もあるのです。そこで、調査・工法・記録のやり方を共通化し、技術レベルについてそろえる役割を担うのが、タイル修繕を目的とした協会です。たとえば以下のような協会があります。
法律・トラブル寄り:マンション外壁タイル剥離問題解決支援センター
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ここでは管理組合やオーナー企業の立場から見たメリットをお話しします。安全面だけでなく、お金や説明責任の面でも違いがあるのです。
協会会員企業は、建築基準法の定期報告制度や、外壁タイルに関する国の通達・ガイドラインを踏まえた調査・工事の提案が前提です。
その考え方に沿った診断や、補修方法を提示してくれるケースが多く見られます。そのうえで、どの範囲をいつ調査したか?どの場所にどのような浮きやヒビがあったか?どの工法で補修したかといった情報を図面や写真でまとめてくれるところも多々あるのです。
万が一、外壁タイルに関するトラブルや事故が発生しても、担当者個人に責任が集中しにくくなるのです。「協会会員に依頼し、協会基準どおりの診断と補修を行った」という事実は、管理者として必要な注意義務を尽くした根拠になります。
国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」では、外壁やタイルの修繕をふくめて、将来の工事内容とおおよその費用を見積もることがすすめられています。修繕積立金のガイドラインでも、長期修繕計画にもとづいて積立額を考えることが基本とされているのです。
協会会員企業は、タイルの調査結果をもとに今回どこまで直すか、次回以降に回す部分はどこかその場合の費用と時期のイメージについてまとめて提案できます。そのためライフサイクル全体のコストを比べながら判断できるのです。
協会会員企業に任せる最大の利点のひとつが「協会基準=自社基準」として流用できる点です。管理会社やオーナー企業側で一から技術基準や調査範囲を設計しなくてもかまいません。「協会が定めた調査・工法・記録のルールに沿って実施しました」と説明できるからです。理事会資料や稟議書にもそのまま反映しやすく、担当者個人の判断に頼らない意思決定プロセスをつくれます。
参照:国土交通省「長期修繕計画標準様式・長期修繕計画作成ガイドライン」

マンションタイル修繕協会会員企業を選ぶときのポイントと、考えておきたい行動ステップを整理してお話しします。単発の工事ではなく「長期のパートナー」として考えることが大切です。
主な協会の多くは、公式サイト上で会員名簿や加盟企業一覧を公開しています。まずはエリアと業種で絞り込み、自分たちのマンション規模に近い実績のある会員企業をリストアップするのです。
そのうえで、各社のホームページや資料をチェックします。タイル修繕の事例写真、診断報告書や図面のサンプル、担当者の資格や経験など情報収集をするのです。「協会のロゴだけ載っている会社」ではなく「協会の基準を実務で使っている会社かどうか」を見ることが大切になってきます。
協会会員企業を修繕戦略に組み込むには、次の3ステップが現実的です。
この流れを一度つくっておけば、タイル剥落のリスクを減らしながら、長期的にもムダの少ない修繕計画を立てやすくなります。協会会員企業を上手に活用することが、マンション全体の安全と資産価値を守る近道になるのです。

外壁タイル工事は「価格」ではなく「根拠」と「説明可能性」で結果が変わります。管理組合様・オーナー企業様・管理会社様から特に多い確認事項を、意思決定に直結する観点で整理します。
A.自動的に担保されるわけではありませんが、担保に必要な枠組み(基準・手順・記録)が整っている可能性が高まります。外壁タイルは調査範囲の設定、工法選定、施工管理、完了後の証跡提出までが一連の品質要件です。
協会会員企業であっても、提案書に仕様の根拠、数量算出のプロセス、提出資料の範囲が明記されているかを確認し、実務として協会基準を運用できている会社を選ぶことが重要です。
A.単純に「高い」とは言い切れません。会員企業は調査・記録・品質管理を仕様として組み込みやすく、その分、見積の内訳が厚く見えることはあります。ただし、数量根拠が曖昧なまま契約して追加費用が発生する、補修漏れが出て再工事になる、説明不足で合意形成が遅れるといった“見えないコスト”を抑えられる場合があります。
結果として、ライフサイクルコストとリスクの総量で比較すると合理的になるケースは多いです。
A.十分とは言えませんが、説明の土台を作りやすくなります。重要なのは「会員だから」ではなく、「協会が定める基準に沿って、どの範囲を、どの方法で調査し、どの仕様で補修し、どの記録を残したか」を示せることです。
理事会・稟議・監査の場面では、調査報告書、劣化マッピング、数量算出根拠、施工写真台帳、完了確認(再打診等)の有無が説明力を決めます。
A.実務上は2〜3社が現実的です。ただし、比較の成否は社数より「同条件化」に依存します。調査範囲、工法の前提、足場の考え方、提出資料、保証条件が揃っていない見積は比較になりません。
発注側が先に“比較軸”を決め、同条件で提案させる運用ができれば、過度に社数を増やさずとも適正判断が可能です。
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A.会員証明(加盟の根拠)に加え、提案内容の裏付けとなる資料の提出可否を確認してください。
具体的には、調査計画(範囲・方法)、調査報告書サンプル(写真品質・図面化の粒度)、劣化マッピングと数量算出の考え方、施工写真台帳の提出範囲、保証範囲と免責条件、完了後の確認方法(再打診等)です。
これらが揃う会社は、社内・理事会への説明に耐える可能性が高いと言えます。

マンション外壁タイルの修繕は、工事そのものよりも「どの範囲を、どの根拠で、どの仕様で直すか」という意思決定の品質が結果を左右します。協会会員企業の活用は有効な選択肢ですが、会員であることだけで安全性やコスト最適化が保証されるわけではありません。
修繕ひらまつでは、会員企業の確認支援に加え、調査範囲の設計、報告書・マッピングの粒度、数量根拠の整合、相見積もりの同条件化、保証条件の読み解きまでを整理し、理事会・稟議・監査で説明可能な形に落とし込みます。
ご相談は、問い合わせフォームからのお問い合わせ、メールでの資料共有、電話での事前相談、ショールームへの来店のいずれでも対応可能です。現状の見積書や前回報告書、図面、修繕履歴があれば、論点を可視化したうえで、過不足のない発注仕様へ整えます。
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