外壁タイルの浮きはこう直す!注入工法の費用と効果を解説

大規模修繕の豆知識 2025.12.06 (Sat) 更新

外壁タイルの浮きはこう直す!注入工法の費用と効果を解説

外壁タイルの「浮き」は建物の見た目だけでは判断できません。現場で調査すると「外観はきれいなのに内部が広範囲で剥離している」というケースも多数見受けられます。

タイルの落下は深刻な問題で、落下地点に運悪く人が居れば命にも関わる大事故です。建物管理者にとっては避けて通れないリスクと言えます。

そこで今回のお役立ちコラムでは、タイル剥落対策の補修手法である注入工法についてくわしくお話しします。「注入工法はどのような効果があるのか?」「費用は?」を専門業者としての実務経験を踏まえて整理しました。

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外壁タイルの浮きが危険とされる理由

外壁タイルの浮きは、表面的には分かりにくいものの、内部で進行する劣化と言える症状です。剥落事故の多くは、軽微な浮きを放置した結果として起こります。

目に見えない内部劣化が剥落事故を招く仕組み

「浮き」とは、タイルと下地モルタルの密着が弱まり、わずかな空間が生まれた状態を指します。外観では異変が見えなくても、内部では剥離がじわじわ進行しているのです。

現場での経験に基づくと、全面打診すると数百点もの浮きが見つかるケースさえあります。このような内部劣化は、日射による膨張・収縮や、雨水侵入による中性化が引き金となり、付着力を急速に弱めるのです。剥落事故は突然発生したように見えますが、実際には長年の蓄積が限界に達した結果と言えます。

築20〜30年で増えるタイル浮きの典型パターン

築年数が進むと、浮きの出方には明確な傾向が見られます。南面は日射による熱応力が大きく、タイル端部や目地周りに線状の浮きが集中しやすくなるのです。反対に北面だと、湿気が残る環境も多いため、中性化の進行で付着力が低下しやすい傾向にあります。開口部周辺は建物の微細な動きが大きく、タイルが歪みの影響を受けて浮きが連続的に発生するケースも見られるのです。

現場では「1か所の不良」ではなく「点在する細かい浮き」の集合体として劣化が進む建物をよく見ます。全面張り替えだと費用が膨大となって現実的ではありません。対策として、注入工法の需要が高まっているのです。

参照:住まいるダイヤル 住宅の外壁タイルの浮き・剥離等の調査・補修方法

参照:国立研究開発法人 建築研究所 外装タイル張り仕上げ材の経年劣化による 剥離・剥落発生のメカニズム

注入工法とは何か?浮きを「固定」して再発を防ぐ仕組み

注入工法とは何か?浮きを「固定」して再発を防ぐ仕組み

浮きが見つかった際、外壁を壊さず内部の付着力を回復させられる工法が「注入工法」です。建物を使用したまま、安全性を高められる工法と言えます。

専用アンカーピン方式とエポキシ樹脂注入の違い

注入工法では、タイルと下地の間に専用エポキシ樹脂を加圧注入し、硬化後に一体化させます。一般的に多く採用される方法が樹脂注入方式です。タイルを撤去せず補修できる点が大きなメリットです。

一方、浮きが大きい場合や落下リスクが高い箇所だと、アンカーピンを併用して機械的固定力を補強します。

どのような建物に向いている?(RC造・タイル仕上げの条件と相性)

注入工法が適しているのはRC造の外壁タイル仕上げの建物です。1990年代以降のマンション・ビルで採用されるタイル仕様は、施工精度や材料特性から浮きが点在しやすく、注入による補修との相性がいい傾向もあります。

外壁を破壊しないため意匠性も保ちやすいですし、同じタイルが入手できない古い建物でも、補修跡が目立たなくなるのです。

一方、タイル自体が割れている場合や下地モルタルの剥落が進んでいる場合、注入工法では対応できず張り替えが必要な場合も出てきます。診断精度が工法選定の分岐点となるため、打診調査に加え赤外線調査を併用し、浮きの分布を可視化する方法が近年の主流です。

参照:建築研究所「RC建物の補修・改修後の外壁仕上げに対する剥離防止安全性に関する研究【基盤】」

張り替え・部分補修との比較|注入工法が選ばれる理由

張り替え・部分補修との比較 _注入工法が選ばれる理由

タイル補修には張り替え・部分的な張り替えなど複数の方法があります。ただ、劣化の広がり方によっては注入工法のほうが合理的で、コスト面でも優位になるのです。

外壁を壊さずに内部だけ補修できるメリット

張り替え工法では、タイル撤去・下地補修・タイル再施工と工程が多く必要です。そのため、騒音・粉じん・工期がどうしても大きくなります。さらに古いタイルは同じ色柄が入手できず、部分的に張り替えると補修跡が目立つことになるのです。

注入工法は既存タイルを残したまま、内部の付着力を回復できるため、外観を維持したい建物に適しています。住戸数の多いマンションでは工期短縮の恩恵が大きく、居住者負担の最小化が期待できるのです。また、劣化が点在し数百点規模になると張り替えでは費用が跳ね上がります。必要箇所を効率よく補修できる注入工法は、現実的な選択肢と言えるでしょう。

工期・費用・騒音の観点での比較表

以下に比較をまとめます。費用目安はあくまで実務相場に基づく、大まかな目安と考えてください。

補修方法 メリット デメリット 費用目安
注入工法(樹脂) タイルを壊さない・広範囲対応・外観維持 針穴跡の仕上げが必要 2,000〜4,000円/点
アンカーピン併用 浮きが大きい箇所に有効 施工跡がわずかに残る 4,000〜7,000円/点
張り替え工法 タイル破損部に確実 工期は長い・粉じん・騒音 20,000〜35,000円/㎡

参照:国土交通省 公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)

注入工法の費用相場と金額差が出るポイント

注入工法の費用は「浮きの密度」「下地状態」「診断精度」により大きく変動します。ここでは適正費用の考え方を整理します。

診断手法(打診・赤外線)と数量算出で変動する理由

費用の根拠を決めるのが診断精度です。打診調査は経験が仕上がりを左右し、赤外線調査は広範囲を短時間で把握できる反面、日射条件に左右されます。両者を組み合わせて正確に図面化すれば、施工数量が明確にできるのです。

逆に診断を省略したり、曖昧な数量算出のまま工事が進んだりすると、追加費用や補修漏れのリスクが高くなります。「診断の質は補修の質」という考えに基づくと、投資を惜しまないことが長期的なコスト削減につながるのです。

信頼できる施工会社の選び方とチェックポイント

信頼できる施工会社の選び方とチェックポイント

安全に仕上げるためには、材料・施工管理・記録提出の3点が整った施工会社を選ぶことが重要です。

エポキシの品質・注入圧管理・写真台帳の有無

施工品質は材料と管理精度で決定します。エポキシ樹脂は粘度が高過ぎると充填不良を起こし、安価な樹脂だと耐久性が不足しがちです。また、注入圧が高過ぎるとタイルが浮き上がり、低過ぎれば奥まで樹脂が届きません。

こうした微妙な調整を行うには経験が不可欠です。完成後、写真台帳として記録を残すことが品質の証明になります。透明性の高い施工会社は信頼に足る判断材料となるのです。

保証範囲と再発リスクの説明ができる会社か

保証は年数より「どこまで保証するか」が重要です。浮き補修は下地状態に依存するため、過度に広い保証を提示する会社より、条件を明確に説明できる会社のほうが信頼性はあります。

再打診を実施し、施工結果の確認をしっかり行う会社は品質意識が高い傾向があるため、長期的に安心して任せられるのです。建物は環境条件で劣化進行が異なるため、リスクと限界を正直に伝える姿勢こそ、オーナーにとって最も大切な判断軸と言えるのです。

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工法選定の流れ|調査から施工完了まで

注入工法は大まかに以下の流れで進行します。

  1. 1.調査
  2. 2.数量化
  3. 3.施工
  4. 4.確認
  5. 5.調査から施工

最初に全面打診調査を行い、浮きの位置・範囲・深さを把握します。赤外線調査を併用すれば、分布図の精度が上がり、補修数量の確定も容易です。

調査データはCAD図面として整理し、数量を明示することで見積の透明性を高めます。ここでの精度が工事費・品質の双方を決定づけるため、最も重要な工程と言えるのです。数量が明確になれば、不要な追加工事や補修漏れを防ぎ、トラブル回避につながります。

施工後の打診確認・仕上げ補修

注入後は硬化を待ち、再度打診を行って充填状態を確認します。不良があれば追加注入を実施し、アンカーピン使用箇所は仕上げ補修で外観を整える流れです。

最後に写真台帳として証跡を残します。補修の透明性と将来の維持管理に役立つ資料となるからです。施工直後だけでなく、定期的な点検と記録更新を行えば、建物全体の安全性を長期的に確保できます。

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FAQ|外壁タイルの注入工法についてよくある質問

FAQ|外壁タイルの注入工法についてよくある質問

注入工法は「タイルを残して安全性を回復できる」一方で、適用条件・数量根拠・施工管理の精度によって成果が大きく変わります。

管理組合様・オーナー様・PM会社様から寄せられる論点を、実務判断に直結する形で整理します。

Q1.注入工法だけで、本当に剥落リスクは下げられますか?

A.適用条件が合っていれば、剥落リスク低減に有効です。タイルと下地の「浮き」が主体で、タイル自体の割れや下地モルタルの欠損が限定的な場合、樹脂注入により付着力を回復し、一体化させることで落下リスクを抑えます。

ただし、下地の剥落が進んでいる、タイルが破損している、雨水浸入経路が放置されている場合は、注入だけでは再劣化や不具合につながるため、張り替え・下地補修・シーリング改修の併用判断が重要です。

Q2.「樹脂注入のみ」と「アンカーピン併用」はどう使い分けますか?

A.基本は浮きの程度と落下リスクで使い分けます。点在する軽度〜中度の浮きは樹脂注入が合理的です。一方、浮きが大きい箇所、端部・開口部周りなど応力が集中しやすい箇所、高所で第三者被害のリスクが高い箇所は、機械的固定力を補うためアンカーピン併用を検討します。

結論としては、打診結果(範囲・密度)と部位特性(応力・雨掛かり)を掛け合わせて仕様を組むのが、過不足のない設計になります。

Q3.費用は「点単価」だけで比較してよいのでしょうか?

A.点単価だけの比較は危険です。注入工法の適正価格は、①数量根拠(打診・赤外線の図面化)、②施工仕様(注入口・注入量・圧管理・仕上げ材)、③安全対策(足場・養生・第三者対策)、④品質管理(写真台帳・再打診確認)で決まります。

単価が安く見えても、数量算出が曖昧で追加が発生したり、管理が甘く充填不足が残ったりすれば、結局コストとリスクが増えます。見積比較は「同条件化(同じ範囲・同じ仕様・同じ成果物)」が前提です。

Q4.どの程度の期間、効果が期待できますか?再発はありますか?

A.期待できる効果は大きい一方、再発ゼロを断言できる工法ではありません。注入で付着力を回復しても、建物の熱応力・躯体の微細な動き・雨水浸入・中性化などの環境要因は継続します。そのため、再発リスクは「既存下地の状態」「防水ライン(シーリング等)の健全性」「施工管理の精度」「その後の点検運用」に左右されます。

重要なのは、保証年数の長さよりも、保証範囲と免責条件、そして施工後の再打診確認や定期点検の運用をセットで提案できる会社かどうかです。

Q5.居住中(稼働中)のマンション・ビルでも施工できますか?

A.可能です。注入工法は張り替えに比べて解体工程が少なく、騒音・粉じんを抑えやすい傾向があります。ただし、実務上は足場設置、穿孔音、養生、臭気対策、作業時間帯の調整、バルコニー周りの動線配慮など、居住者・テナントへの影響をゼロにはできません。

法人案件では、工区分けと掲示文・工程周知、写真台帳の提出範囲まで含めて「管理の設計」ができるかが、トラブル回避の要点になります。

修繕ひらまつに相談する|注入工法の費用と効果を“根拠付き”で最適化する

修繕ひらまつに相談する|注入工法の費用と効果を“根拠付き”で最適化する

外壁タイルの注入工法は、タイルを壊さずに安全性を高められる一方で、診断と数量根拠が曖昧なまま進めると、追加費用・補修漏れ・再発リスクという形で負担が跳ね返ります。法人・管理組合の意思決定では「どの範囲を補修すべきか」「樹脂のみかアンカーピン併用か」「見積比較をどう同条件化するか」「施工後にどの証跡を残すか」までを一貫して整理することが不可欠です。

修繕ひらまつでは、打診・赤外線等の調査結果を劣化マッピングとして数量化し、仕様・見積・合意形成につながる形で計画を組み立てます。ご相談は、問い合わせフォームからのお問い合わせ、メールでの資料送付、電話での事前相談、ショールームへの来店のいずれでも対応可能です。

前回報告書や図面、修繕履歴があれば、拝見したうえで「過不足のない注入範囲」と「費用がぶれない進め方」を具体化します。

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