
大規模修繕は、外壁や防水設備のほか、設備までトータルにメンテナンスをする大規模なプロジェクトです。一度工事が終わればやり直しはほとんどできません。
だからこそ施工業者の選定には慎重な判断が求められます。よくある失敗は「見積書の金額だけで施工会社を選ぶ」「技術的な判断は施工側にお任せ」というケースです。このような内容では社内や理事会への説明材料が圧倒的に不足しますし、不安を払拭できません。
そこでポイントになるのが「1級建築士の関与」です。今回のお役立ちコラムでは、1級建築士が関わる大規模修繕はなぜ安心なのかについて整理し、くわしくお話しします。

大規模修繕では、管理組合の修繕積立金や企業の設備投資が大きく関わる大規模な工事です。数千万円レベルの金額が動くからこそ、施工業者の選定には慎重な判断が求められます。そこでリスクを減らすポイントとして、1級建築士の関与があげられるのです。
一級建築士が大規模修繕に関与すれば、診断結果や改修方針が図面や報告書として体系的に整理しやすくなります。施工内容の信頼性も高まるのです。
劣化診断の結果と改修方針も、図面や報告書として整理できます。「どこがどの程度傷んでいるのか」「なぜ今回この範囲を直すのか」といった説明が、写真や数量とともに示されます。
将来予想される修繕工事を一覧化し、周期・概算費用・収支計画を整理したうえで、長期修繕計画と修繕積立金を検討することは重要です。長期修繕計画とセットで議論することで、大規模修繕の位置づけも明確になります。
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1級建築士は、劣化状況と長期修繕計画を踏まえて「今やるべき工事」と「次回に回す工事」を切り分けられるのです。過剰な工事も過小な工事も避けやすくなり、将来の修繕サイクル全体を視野に入れた判断ができます。
参照:国土交通省「長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン」
参照:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」
建築士が関わらない場合に起きうる、代表的な問題を3つピックアップします。これがそのまま、1級建築士が関わるメリットの裏返しとなるのです。
建築士などの第三者が関与しないと、各社バラバラの提案書と見積書を、結果的に金額だけで比較しがちです。外壁タイルの下地補修量や防水仕様、塗料グレードや足場の安全対策などが揃っていない状態で判断することになります。
「A社は高い、B社は安い」と議論しても、実態として比較になっていないのです。本来は建築士が仕様書と図面をまとめ「同条件」で見積もりを取るのが理想と言えます。これをしないと、下地補修や仮設を削って金額だけが安い見積もりに魅力を感じてしまうのです。数年後の再劣化や漏水トラブルにつながりかねません。
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外壁タイルの浮きやモルタルの剥離のほか、鉄部の腐食など下地補修は足場をかけてからでないと分からない部分も多数あります。
建築士や第三者の技術者が関わらず施工会社任せになると「どこまで補修するか」「数量をどう見積もるか」の判断根拠が見えにくくなるのです。
1級建築士が関わる場合、予備調査でサンプル調査を行うため「想定補修量」と「増減時の判断基準」をあらかじめ共有しやすくなります。工事中の変更にも一定のルールが働き、双方の納得感を保ちやすくなるのです。
工事が始まって「想定以上に劣化している箇所」が見つかる場合もあります。その際、建築士がいない現場だと、施工会社からの追加提案が妥当かどうか発注者側だけで判断しなければなりません。
1級建築士が入っていると「安全上やむを得ない追加」と「やらなくても大きな支障はないグレードアップ」を仕分けして、優先順位をつけられるのです。
参照:国土交通省「定期報告制度における外壁のタイル等の調査について」
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ここでは、1級建築士が大規模修繕のどこに関わるのかを、設計・監理・第三者チェックという3つの観点で整理します。
スタートは劣化診断です。外壁タイルの浮きやひび割れやモルタルの浮き、防水層の劣化や鉄部のサビなどを調査して「どの部位にどの程度のリスクがあるか」を整理します。そのうえで、今回の工事でどこまで改善するか、どの工法を採用するか設計に落とし込むのが建築士の役割です。
外壁の全面打診や赤外線調査を含む定期的な調査も実施して劣化診断を行います。「どこまで調査してどの部分を今回の工事対象とするか」という線引きもできるのです。
設計図書(図面・仕様書)がないまま見積もりを取ると、工事内容の決定権が施工会社側に偏りがちです。1級建築士が関わると、外壁・防水・金物・共用部などの仕様や施工範囲が図面に整理され、共通ルールとして機能します。
結果、施工会社ごとの「言った・言わない」を避けられるのです。入札・相見積もりも同じ土俵で比較しやすくなります。国土交通省が公表しているガイドラインや管理計画認定制度でも、長期修繕計画と修繕積立金、維持保全計画を一体で考える枠組みが示されているのです。図面・仕様書に落とし込むことで、現場での運用がしやすくなります。
1級建築士は「配筋」「下地処理」「塗り厚」「シーリング処理」などを現場で確認し、必要に応じて是正を指示します。施工会社が自らチェックするだけでは、工期やコストを優先し、見落としが出るリスクも出てくるからです。第三者的な視点を持つ建築士が関われば「見えなくなる部分」の品質も担保しやすくなります。

1級建築士が関われば技術面だけでなく「社内・理事会まわりの仕事」がどう変わるか整理できます。
1級建築士が作成する仕様書や図面の多くは、国土交通省の各種ガイドラインで示されている考え方を踏まえて組み立てられます。長期修繕計画や修繕積立金のガイドラインとも、整合させやすいのが特徴です。
「国の考え方に沿った計画」とし、そのまま社内基準や管理規約に落とし込めます。たとえば「長期修繕計画標準様式・長期修繕計画作成ガイドライン」や「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」では、長期修繕計画の考え方や、修繕積立金の目安が示されています。
これらに沿った設計・資金計画なら「国の考え方に沿った計画」として、社内基準や管理規約に落とし込めるのです。理事会資料や社内稟議においても、ガイドラインとセットで説明できるため、技術的な妥当性を示せます。
万が一、外壁タイルの剥落や漏水などのトラブルが起きたとします。「1級建築士が関与し、公的ガイドラインを踏まえて診断・設計・監理を行った」という事実は、管理者として注意義務を果たそうとしたことを示す有力な材料になり得るのです。
第三者的な基準に沿って意思決定した点は、リスクマネジメント上、重要な意味があります。工事前後の写真や検査記録、監理報告書が揃っていれば、原因究明や再発防止策の検討もスムーズになるのです。
次回の大規模修繕では、まず「1級建築士が設計・監理に関わること」を条件に、少なくとも1社からは見積もり・提案を取ることをおすすめします。
そのうえで、建築士が社内・理事会向けの説明資料まで作成してくれるか、工事監理報告書や検査記録をどこまで提出してくれるか、業者選定の判断軸として加えてみてください。こうした条件を満たすパートナーを選べば、コストだけでなく「説明責任」と「長期的な安心」を同時に確保しやすくなります。
参照:住宅金融支援機構「大規模修繕の手引き~マンション管理組合が知っておきたい工事・資金計画のポイント~」

大規模修繕は「工事をやる」だけでは完結しません。発注仕様の設計、相見積の同条件化、工事中の変更判断、完了後の証跡整備まで含めて、発注者側の説明責任が問われます。
1級建築士の関与を検討する法人・管理組合・管理会社の方から多い質問を、実務の判断軸として整理します。
A.もっとも大きく変わるのは「仕様が言語化・図面化され、施工会社任せの余地が減ること」です。劣化診断の結果を根拠として、補修範囲・工法・材料・品質基準を仕様書に落とし込み、相見積を同条件で比較できる状態を作れます。
工事中も、追加提案の妥当性を技術的に仕分けし、優先順位を付けて意思決定できます。結果として、コストのブレと説明コスト(理事会・稟議)の双方が下がります。
A.目的と立場が異なります。施工会社の現場管理は、契約した仕様を工程どおり進めるための管理です。一方、1級建築士の工事監理は「図面・仕様書どおりに施工されているか」を第三者的に確認し、必要に応じて是正を求める役割です。
特に下地処理、防水の立上り、シーリング、塗り厚、タイル補修の注入条件など、完成後に見えなくなる工程の品質確保に効果があります。
A.あります。設計・監理費が追加される一方で、仕様の曖昧さに起因する追加請求、過剰工事、補修漏れによる再工事、合意形成の遅延といった「隠れコスト」を抑えやすくなります。
特に数千万円規模の案件では、仕様の同条件化と数量根拠の整理だけでも意思決定の精度が上がり、結果として総額の最適化に寄与するケースが多いです。
A.不要とは言い切れません。施工会社所属の建築士は、発注者の利益と完全に切り分けられない場面が生じ得ます。発注者側の説明責任、相見積の公平性、追加変更の妥当性判断を担保したい場合は、立場が独立した建築士(設計監理者)を置く意義が残ります。
判断基準は「誰の立場で仕様を決め、誰が品質を確認するのか」を明確にできるかです。
A.最低限は、①竣工図・過去の大規模修繕の記録(仕様・数量・写真)、②長期修繕計画、③現状の不具合(漏水、タイル浮き、鉄部腐食など)の把握です。これらが揃うほど、劣化診断から仕様化、数量根拠の明確化がスムーズになります。
併せて、提出物(仕様書、劣化マッピング、監理報告書、検査記録)の範囲を契約前に合意しておくと、理事会・稟議の運用が安定します。

大規模修繕は、工事費の多寡よりも「技術的に妥当な根拠を持って意思決定できるか」が成否を左右します。1級建築士が関与することで、劣化診断にもとづく補修範囲の線引き、図面・仕様書による同条件見積、工事中の追加変更の仕分け、完了後の検査記録と監理報告書の整備まで、発注者側が社内・理事会へ説明できる材料を体系的に揃えやすくなります。
修繕ひらまつでは、案件の規模や建物特性に応じて、設計・監理の関与範囲を整理し、過剰工事・補修漏れ・追加費用のリスクを抑える発注仕様づくりを支援します。ご相談は、問い合わせフォームからのお問い合わせ、メールでの資料共有、電話でのご相談、ショールームへの来店にて承ります。
既存の見積書や長期修繕計画、過去の報告書があれば、論点を可視化したうえで、意思決定に必要な判断材料へ落とし込みます。
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